CBN/ダイヤモンドホイール・普通砥石のツルーイングとドレス方法
研削加工において、CBN(窒化ホウ素)やダイヤモンドを砥粒として用いた研削砥石(以下ホイール)は高い硬度と耐摩耗性を持ち、硬い素材の加工に優れています。しかし、これらのホイールも使用するにつれて摩耗し、切り屑が詰まったり表面が不均一になったりすることがあります。これにより研削の品質や効率が低下し、加工物の精度や仕上がりに影響を及ぼします。そのため、定期的なドレス作業が必要です。この記事では、CBNホイール・ダイヤモンドホイール・普通砥石のドレス方法について詳しく見ていきましょう。
以下文章から、下記の用語定義によりご説明いたします。
「超砥粒ホイール」「ホイール」…超砥粒(CBN、ダイヤモンド)を用いた研削砥石
「普通砥石」…WAやGCを砥粒として用いた研削砥石 「砥石」…ホイール、普通砥石の両者を指すもの
目次
ドレス方法の分類
CBNホイール・ダイヤモンドホイール・普通砥石のドレス方法は、いくつかの手法に分類されます。主な分類は以下の通りです。
ドレッサを用いた方法
ドレッサとは、砥石のドレッシングを行うための専用の工具を指します。ドレッサは砥石の表面を整え、砥石に新しい砥粒を露出させることで、研削の品質や効率を向上させます。
ドレッサにはいくつかの種類がありますが、一般的なものには以下のようなものがあります。
単石ドレッサ
単石ドレッサとは、ダイヤモンドをシャンクに1個セットしたドレッサを指します。ダイヤモンドが先端に埋め込まれた、鉛筆のような形状です。
機械に固定し、回転する砥石を押し付けてドレッシングを行います。ドレッサ先端部を砥石表面に食い込ませたまま、回転する砥石軸を左右にスライドさせて、砥石表面を削ります。単石ドレッサは使い続けることで、先端が平らになり砥石との接触面積が増えるため、良好なドレッシングができなくなります。
適切なドレッシングを保つためには、ドレッサを定期的に45°回転させて鋭利さを維持する必要があります。そうすることで、粗さが改善し、ドレッサが破損するリスクを減らすことができます。
ロータリドレッサ
ロータリドレッサは、回転式のドレッサで円筒状の形をしており、表面にダイヤモンドが一定間隔で埋め込まれたドレッサを指します。回転しているドレッサに砥石を押し付けながらドレッシングします。高精度なドレッサで、砥石の形状と対になった形状をした特殊なものもあり、このロータリドレッサの形状によって砥石の形状が決まります。
ロータリドレッサでは、複雑な砥石形状をドレッサ形状で作り込むことができるため、機械精度に依存せず、高精度な総形ドレッシングを短時間で行えます。
普通砥石法(WA/GC法)
普通砥石法(WA/GC法)は、WA(ホワイトアルミナ)やGC(緑色炭化ケイ素)を使った砥石スティックを、回転するホイールに当てながら行うドレス方法です。
砥粒を損傷することなく行えることが利点です。砥石スティックは湿らせて使用し、ホイールよりも若干粒度の粗いものを使用するのが効果的です。
ドレッシング作業の目安は、砥石スティックをホイールに当てた際に、弾かれる感触ではなくすっと入るような感触になると良いです。
この方法は、レジンホイールやメタルホイールに対して使用されることが多いです。
軟鋼材ドレッサ
軟鋼材ドレッサは、ホイールの表面(結合剤/ボンド)を削り取るために軟らかい鋼材(生材)が使用されたドレッサです。
軟鋼材ドレッサは、レジンホイールに対して適用されることが多いです。レジンボンドに対して有効なドレス方法で、軟鋼を押し当てることで目立てを行います。
放電ドレッシング
放電ドレッシングは、放電加工を利用したドレス方法です。放電加工とは、電極とワーク間でくりかえし放電を行い、ワークを溶解させて目的の形状を作る加工方法です。放電ドレッシングでは、メタルホイールのメタル結合剤を溶解し、ホイール表面を削り落として目的の形状に加工します。
放電加工は微細加工が可能なので、ホイール表面を微細に形状修正し、ホイールの研削性能を向上させることができます。
製品ごとのドレス方法
前述の通り、砥石の性能を維持し、精度の高い研削を行うためにドレス作業は欠かせません。
ここでは、砥石のタイプごとに推奨されるドレス方法を紹介します。
ビトリファイドホイールのツルーイング・ドレス方法
ビトリファイドホイールは、砥粒を固定するための結合材としてガラス質ボンドを使用しています。
ここでは、主に使用されるドレス方法について、推奨される条件とそれらが精度に与える影響を紹介します。
ビトリファイドホイールのツルーイング・ドレッシングに適合する方法は、以下のとおりです。
〇:実施可能 △:実施可能であるが、精度、効率で劣る ー:実施不可&実績無し
※研削方式、使用状況、目的により最適ドレス方法は変わります
ツルーイング・ドレス方法と工具 | CBNホイール | ダイヤモンドホイール | ||
ツルーイング | ドレッシング | ツルーイング | ドレッシング | |
ダイヤモンド単石ドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド多石ドレッサ | △ | ー | ー | ー |
ダイヤモンド インプリドレッサ | △ | ー | ー | ー |
ダイヤモンド ブロックドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド ロータリドレッサ | ◯ | ○ | △ | △ |
ダイヤモンドツルア (メタルホイール) | ◯ | ○ | ○ | ○ |
ダイヤモンド 電着ホイール | △ | △ | △ | △ |
普通砥石スティック | △ | ○ | △ | ○ |
普通砥石ブロック研削 | ○ | ○ | ○ | ○ |
普通砥石ブレーキ制御 | ○ | ○ | ○ | ○ |
普通砥石カップ砥石駆動 | ○ | ○ | ○ | ○ |
軟鋼ブロック | △ | ○ | △ | ○ |
軟鋼ロール | △ | ○ | △ | ○ |
放電加工法 | ー | ー | ー | ー |
トラバース方式(含むツルーイング)
トラバース方式とは、ドレッサがホイール表面を横切るように移動する方法です。トラバース方式の場合、ドレッサの送り速度を変更することで切れ味をコントロールできます。例えば、送り速度を早くすれば切れ味は良くなりますし、逆に送り速度を遅くすれば切れ味は悪くなります。
一つはアップカットといい、砥石の回転方向とドレッサの回転方向が同じ方向のことを指します。例えば同じ側面から見た時に砥石が時計回りなら、ドレッサも時計回りとなる方向です。もう一つをダウンカットといい、砥石の回転方向とドレッサの回転方向が異なる方向(連れ回り方向)のことを指します。例えば同じ側面から見た時に砥石の回転方向が時計回りなら、ドレッサは反時計回りの方向です。トラバース方式は、アップカット、ダウンカット両方に対応できます。
プランジ方式
プランジ方式では、ドレッサがホイールの表面に対して垂直に押し込まれ、一定の深さでホイールをドレッシングします。
プランジ方式ではダウンカットドレスが推奨されています。
ジェイテクトグラインディングツールのビトリファイドホイール
ジェイテクトグラインディングツールは、ビトリファイドCBNホイールを始めとする多様な超砥粒ホイール・ドレッサを提供しています。当社のビトリファイドCBNホイール「削楽~SAKURA~」は、新開発「多気孔構造」と「高強度結合剤」により、安定した加工精度の維持向上を可能にし、消費電力約10%低減、粗さ維持性3倍向上、残留応力低減を実現いたしました。
また、当社のダイヤモンドツルア「タフプレミアムTi」は高強度結合剤によるダイヤモンド保持力向上をキーテクノロジーとし、従来のメタルボンド方式ダイヤモンドツルアの寿命を2倍に向上しました。ビトリファイドCBNホイールの「削楽~SAKURA~」とセットでお使いいただくことでホイール性能を最大限に発揮することができます。
ロータリドレッサも、総形形状やストレート形状など、さまざまな形状を取り揃えております。ジェイテクトグラインディングツールの製品は、高品質な加工を求めるお客様の要望に応えるために、最先端の技術と厳格な品質管理のもとで製造されています。
レジンホイールのツルーイング・ドレス方法
レジンホイールは、砥粒を固定するための結合材として熱硬化性の合成樹脂を使用しています。
レジンホイールにおけるツルーイング・ドレッシング方法は、簡便性・汎用性・低コストの観点から軟鋼法が主流です。
〇:実施可能 △:実施可能であるが、精度、効率で劣る ー:実施不可&実績無し
※研削方式、使用状況、目的により最適ドレス方法は変わります
ツルーイング・ドレス方法と工具 | CBNホイール | ダイヤモンドホイール | ||
ツルーイング | ドレッシング | ツルーイング | ドレッシング | |
ダイヤモンド単石ドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド多石ドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド インプリドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド ブロックドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド ロータリドレッサ | ◯ | ー | ○ | ー |
ダイヤモンドツルア (メタルホイール) | ◯ | ー | ○ | ー |
ダイヤモンド 電着ホイール | △ | ー | △ | ー |
普通砥石スティック | △ | ○ | △ | ○ |
普通砥石ブロック研削 | ○ | ○ | ○ | ○ |
普通砥石ブレーキ制御 | ○ | ー | ○ | ー |
普通砥石カップ砥石駆動 | ○ | ○ | ○ | ○ |
軟鋼ブロック | ○ | ○ | ○ | ○ |
軟鋼ロール | ○ | ○ | ○ | ○ |
放電加工法 | ー | ー | ー | ー |
以下ではレジンホイールのドレス法として推奨される軟鋼法の事例をご紹介いたします。
ドレッシングスタート時は、ドレッサの推奨切り込み量の1/3~1/2程度に設定し、異音がなければ推奨切り込み量まで上げましょう。
ドレッサ表面に叩き模様や送りマークが見られる場合は、再度ドレッシングしてください。
▼ドレス方法に関するお役立ち動画▼
ジェイテクトグラインディングツールのレジンホイール
ジェイテクトグラインディングツールのレジンホイール「レボメイト」は、金型や半導体治具用セラミックスなどの様々な用途で活躍しております。「新開発結合剤」「高靭性砥粒」「砥粒分散性向上」を採用したことにより、ドレス頻度低減、研削抵抗低減、高精度加工を可能にし、生産性向上に貢献いたします。
メタルホイールのツルーイング・ドレス方法
メタルホイールは、砥粒を固定するために金属を結合剤として使用しています。
ここでは、主に使用されるドレス方法について、推奨される条件とそれらが精度に与える影響を紹介します。
〇:実施可能 △:実施可能であるが、精度、効率で劣る ー:実施不可&実績無し
※研削方式、使用状況、目的により最適ドレス方法は変わります
ツルーイング・ドレス方法と工具 | CBNホイール | ダイヤモンドホイール | ||
ツルーイング | ドレッシング | ツルーイング | ドレッシング | |
ダイヤモンド単石ドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド多石ドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド インプリドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド ブロックドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンド ロータリドレッサ | ー | ー | ー | ー |
ダイヤモンドツルア (メタルホイール) | ◯ | ー | ○ | ー |
ダイヤモンド 電着ホイール | △ | ー | △ | ー |
普通砥石スティック | △ | ○ | △ | ○ |
普通砥石ブロック研削 | ○ | ○ | ○ | ○ |
普通砥石ブレーキ制御 | ○ | ー | ○ | ー |
普通砥石カップ砥石駆動 | ○ | ○ | ○ | ○ |
軟鋼ブロック | △ | △ | △ | △ |
軟鋼ロール | △ | △ | △ | △ |
放電加工法 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ジェイテクトグラインディングツールのメタルホイール
ジェイテクトグラインディングツールのメタルホイール「テラメイトMT3」は、工具・金型分野,セラミックスや航空宇宙分野における高能率研削に多く活躍しています。「新砥粒採用」「新開発結合剤+添加剤」を採用したことにより、ドレス頻度低減、ホイール摩耗量低減、高能率加工による加工時間短縮を可能にし、生産性向上に貢献いたします。
普通砥石のツルーイング・ドレス方法
普通砥石は、砥粒にアルミナやGCなどを使用しています。
ここでは、主に使用されるドレス方法について、ガラス質ボンドを結合剤とした普通砥石で推奨される条件とそれらが精度に与える影響を主な代表例としてご紹介いたします。
〇:実施可能 △:実施可能であるが、精度、効率で劣る ー:実施不可&実績無し
※研削方式、使用状況、目的により最適ドレス方法は変わります
ツルーイング・ドレス方法と工具 | 普通砥石 | |
ツルーイング | ドレッシング | |
ダイヤモンド単石ドレッサ | ○ | ○ |
ダイヤモンド多石ドレッサ | ○ | ○ |
ダイヤモンド インプリドレッサ | ○ | ○ |
ダイヤモンド ブロックドレッサ | ○ | ○ |
ダイヤモンド ロータリドレッサ | ○ | ○ |
ダイヤモンドツルア (メタルホイール) | ー | ー |
ダイヤモンド 電着ホイール | ○ | ○ |
普通砥石スティック | ー | ー |
普通砥石ブロック研削 | ー | ー |
普通砥石ブレーキ制御 | ○ | ○ |
普通砥石カップ砥石駆動 | ー | ー |
軟鋼ブロック | ー | ー |
軟鋼ロール | ー | ー |
放電加工法 | ー | ー |
ジェイテクトグラインディングツールのロータリドレッサ
ジェイテクトグラインディングツールのロータリドレッサには、焼結方式、電鋳方式SCタイプ、電鋳方式DDタイプ、電鋳方式HSタイプがあります。
複雑な形状や特殊な材質の加工にも対応できるホイールやドレッサで、お客様の生産効率や品質の向上をサポートします。