高精度金型を実現する研削加工|表面粗さを制御するポイント
製品を形作る金型の性能を左右する重要な要素のひとつが「表面粗さ」です。金型の表面粗さは、成形品の品質や金型の寿命に大きく影響します。金型の研削プロセスにおける加工条件や砥石仕様が不適切だと、「狙い通りの粗さが出ない」「仕上げ加工に時間がかかる」「加工後にバリやスジ模様が出る」などの課題が発生します。
本記事では、表面粗さにおける「基礎知識」「金型製作での重要性」「研削加工で制御するポイント」を徹底解説していきます。
目次
表面粗さの基本知識|定義と重要性
製造業において表面粗さは重要な品質指標です。この章では、表面粗さとは何か、その定義と重要性について詳しく解説します。(参照 JIS B0601-2013)
表面粗さとは?
表面粗さとは、製品や部品の表面における微小な凹凸を数値化したものを指します。

表面粗さの主要な評価項目:RaとRzの違い
表面粗さを表す主な評価指標として「Ra:算術平均粗さ」と「Rz:最大高さ粗さ」があります。どちらも表面の凸凹を示すものですが、計算方法が異なるため、用途によって適切に使い分ける必要があります。
Ra:算術平均粗さ…表面の凸凹の平均的な高さを示す値
Ra:算術平均粗さとは、特定の長さ:Lを選び、選んだL部分の平均線を基準として、X軸を水平方向、y軸を垂直方向に設定し、粗さ曲線をy=Z(X)で表したときの下記式の値をµmで表したものです。


Rz:最大高さ粗さ…表面の最も高い部分と最も低い部分の差
Rz:最大高さ粗さとは、平均線を基準として、最も高い部分と最も低い部分の差をµmで表したものです。

全体の表面の均一性を評価する場合には「Ra」、表面の傷などの局所的な凸凹を評価する場合には「Rz」を使用します。
なぜ表面粗さが重要なのか?
金型の表面粗さは成形品の表面粗さに影響します。では、金型とその成形品の表面粗さが適切でない場合、どのような不具合が考えられるでしょうか。
成形品の外観品質の低下
表面粗さが悪いと、成形品の見た目の美しさに影響します。
成形品の寸法精度
表面粗さが悪いと、製品ごとに寸法精度のばらつきが発生する可能性があります
成形品の耐摩耗性の低下
表面粗さが悪いと、摩耗係数が大きくなるため摩耗しやすくなり、成形品の耐摩耗性が低下して製品の寿命に影響します。
金型の寿命低下
表面粗さが悪いと、摩擦係数が大きくなるため金型が摩耗しやすくなり、結果的に金型の寿命が低下して製造コストに影響します。
以上のように、金型の表面粗さが適切でないと、製品の外観だけでなく、製品の性能や寿命にも大きく影響します。そのため、金型の表面粗さを制御することはとても重要です。
研削加工で表面粗さを制御するポイント
理屈上では、粒径の小さな砥粒の砥石仕様を選定し、工作物の送り速度を下げることで表面粗さは改善しますが、加工時間が長くなり生産性は低下します。そのため、狙いの表面粗さと加工効率のバランスを考慮して、砥石仕様や加工条件を選定することが重要です。
本章では、研削プロセスにおける金型表面粗さの改善方法を、加工効率を考慮しながら解説していきます。
加工条件改善による表面粗さの改善方法
加工条件の変更で工作物の表面粗さを改善するには、工作物の送り速度を下げる、砥石周速度を上げるなどが有効的です。しかし生産性の低下や、研削熱の発生により目つぶれが発生して研削焼け・研削割れ・ビビリの要因となる可能性があります。
砥石仕様改善による表面粗さの改善方法
金型の表面粗さには、砥粒径が大きく影響します。砥石の粒度が粗い場合、研削効率は向上しますが表面粗さは粗くなります。逆に細かい粒度の砥石を使用すると、表面仕上げは高品質になりますが、研削効率が低下する傾向があります。
下記は当社レジンホイール「テラメイト」「レボメイト」を使用して、金型を研削した際の加工実績になりますのでご参考ください。

※切れ味に特徴のあるジェイテクトグラインディングツールのレジンホイール「レボメイト・テラメイトプレミアム」では、同番手の他社ホイールよりも表面あらさが粗く仕上がる特徴があります。
目標の仕上げ精度から、適切な加工条件・砥石仕様を選定しましょう。
安定した表面粗さを維持するための「ドレッシング」
レジンホイールで安定した精度での研削を維持するためには、定期的な砥石のドレッシングが重要です。表面状態が悪化すると、「目こぼれ」「目つぶれ」「目詰まり」が発生しやすくなり、結果として研削精度が低下します。適度なドレッシングによるメンテナンスを実施しましょう。

金型研削で発生するトラブル「スジ模様」「たたき模様」
金型研削では、下記写真のような「スジ模様」や「たたき模様」などのトラブルが発生にすることがあります。
▼スジ模様(例)▼ ▼たたき模様(例)▼

スジ模様やたたき模様も、成形品の品質に影響を及ぼす課題の一つです。表面あらさの改善方法と一緒に対策方法を抑えておきましょう。
金型研削の高精度×高能率を実現する当社製品のご紹介
当社レジンホイール「レボメイト」「テラメイトプレミアム」は切れ味の良さが特徴で、金型研削の高精度かつ高能率な加工を実現します。
▼金型業界向け研削事例集公開中▼

複合材金型(超硬+SKD)研削事例:加工時間50%以上短縮
ジェイテクトグラインディングツールのレジンホイール「レボメイト」は、モーターコア金型などに使用される大型複合材金型(超硬+SKD)研削において、前後送り速度向上による加工時間50%以上短縮を実現しました。

超精密金型研削事例:中粗廃止(工程集約)、仕上研削時間60%短縮
ジェイテクトグラインディングツールのレジンホイール「テラメイトプレミアム」は、超精密金型研削において、中粗廃止による工程集約、さらに仕上研削時間60%短縮を実現しました。

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研削加工なんでも相談室では、研削トラブルの要因解析や加工条件・砥石仕様のご提案など、研削加工に関する様々なお悩みを受け付けております。お客様の抱えるお困りごとに合わせて、最適な解決策をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。